被害者が、人身傷害補償保険から保険金を受け取った場合、保険金の支払いをした保険会社は、被害者が加害者に対して有する損害賠償請求権を代位することとなります。
このとき、被害者にも一定の過失があり、かつ、被害者に生じた損害の一部のみしか人身傷害補償保険の保険金が支払われなかった場合には、被害者の加害者に対する損害賠償請求権と、保険会社が代位した損害賠償請求権との関係が問題となることがあります。
例えば、被害者に1000万円の損害が生じているケースにおいては、人身傷害補償保険により600万円(人傷基準算定額)を受領していた場合、その後の加害者との間での裁判において、加害者の過失が5割と認定されたとすると、加害者が支払うべき賠償金は500万円ということになりますが、この加害者から支払われる500万円を被害者と保険会社がどのような割合で取得するのかが問題となることがあります。
この点、実務上、人身傷害補償保険は、被害者に生じる損害をその過失の有無・割合にかかわらず填補する趣旨・目的を有しているものと解釈されており、保険会社が代位する範囲は「保険金請求権者(被害者)の権利を害さない範囲」と考えられています(最判平24.5.29等)。
このことから、実務上は、人身傷害補償保険により支払われる保険金は、被害者自身の過失の部分に充当されるものと考えられています。
つまり、上のケースでは、被害者自身の過失も5割となるため、本来であれば被害者自身が損害のうち500万円を負担することとなるところ、これに、人身傷害補償保険から支払われる保険金を優先的に充てることとなります。実際には人身傷害補償保険から600万円の保険金を受領しているので、被害者自身が負担する損害を100万円超過して保険金の支払いを受けていることとなります。
この超過している100万円の部分が、保険会社が代位する部分となります。その結果、加害者から支払いを受ける500万円のうち、400万円は被害者が取得し(その結果、被害者は損害額1000万円の満額を受領できることとなります)、100万円を保険会社が取得することとなります。
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